2008年 11月 01日
kembali (戻る)のイメージ
以下再録:

kembali(戻る)

Mochtar Lubis の小説『果てしなき道』 JALAN TAK ADA UJUNG (Pustaka Jaya, Cetakan keempat, 1977) をハンディスキャナーを用いて入力した。総語数は約3万2千語。頻度リストの上位20語を紹介すると以下の通り。

a0051297_13564936.gifすでに報告した Maria A. Sardjono, ANGSA LIAR と,Yudhistira ANM Massardi, WANITA DALAM IMAJINASI の二つのリスト(通信1994,32ペ参照)と比べてみると,両者の1位 -nya と2位 yang の間に dan が割り込むかたちになって yang が3位に下がっていること,また,一人称二人称の人称代名詞 aku,kau,kamu がここに見えないこと,三人称「彼は」は ia でなく dia であること,などが目に付く。

上の特徴はこの小説の文体,語り口にかかわるものだが,内容にかかわるものとして,主人公の小学校教師 Guru Isa,その若い友 Hazil,イサの妻 Fatimah (第21位。ハジルと不倫関係に陥る)の名前の他に,mereka,orang,kembali などをマークすることが出来よう。

この,恐怖心のエチュードと呼んでいい小説の最大のキーワードは「恐怖」である筈なのに,それらしきものがリストに見えない理由は,takut 131, ketakutan 111, ketakutan-ketakutan 4 のように,言ってみれば票が割れてしまったためである。

ketakutan-ketakutan というような重複形をどう数えるべきかは毎回の頻度調査で頭を悩ますところだが,もしこれを原形が2回使われたものと数えるならば,ketakutan 111 +(2 x 4)=119。これを takut の頻度と合算すると 250 となり,つまりは「恐怖」がkembali を上回って17位,orang のすぐ後につく。本当はこうなっている方が,この小説の内容をより分かり易く反映する頻度リストというものだろう。

ところで,「戻る,もう一度」などの意味をもつ kembali も重要なキーワードであるということは,今回初めて気付いた。

念のためその用例198例を打ち出して,menarik tangannya kembali dari bungkusan beras (もう貸し売りは出来ないと断られて)米の袋に伸ばした手をまた引っ込める,lari masuk warung kembali ワロンにまた逃げ込む,Guru Isa menjadi takut kembali イサはまた恐怖心に捉えられた,Anak itu harus kembali あの子は戻ってくる,戻ってこなくちゃならない,mereka akan datang kembali 連中はまたやってくる,Takut ditolak kembali (妻に)また拒まれるのが恐ろしかった,Kelaki-lakiannya telah kembali 男としての力が戻っていた(主人公 Guru Isa の性的不能が最後の最後で回復する話でもこの小説はあるわけなのだ),等を一覧して納得した次第。

つまり,果てしなく伸びる一直線の底に絶えず立ち戻るイメージがあるというわけだ。[Sg 1995.3.26]
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by sanggarnote | 2008-11-01 09:32 | 頻度


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