2008年 11月 12日
KAMI in-group
a0051297_9595290.jpgtwo days away (あと二日)で,オバマ氏の YOU とケネディー大統領の YOU について書いた後だったので,オバマ候補が当確を決めた 11/6 朝日朝刊の「自発的なまとまりを求めて --- オバマ氏を選んだ米社会」(生井英考,共立女子大,アメリカ研究) の小見出し「You と We」は見落すわけもない.

オバマは「You (あなた)」を多用しつつ最後にくるりと裏返して「イエス,ウィー・キャン(そう,ぼくらはやれる)!」と決めるのだが,ジャクソンは「We (我々)」を繰り返すのが特徴だった.「我々はいつも傷ついた.それなのにいつも貧しい」「我々はいつも働いた.なのにいつも虐げられた」
要するにジャクソンの演説は「我々」とそれ以外を峻別する強烈な力を生み出すことでカリスマ性をはらむのだ.

Jesse Jakson: いまから20年ほど前,民主党の黒人候補として初めて可能性がある存在だと評されたカリスマ的な演説の名手.故キング牧師の直弟子で,伝統的な黒人政治家・運動家の説法スタイルを通す(この記事による)

このジャクソン氏の WE に関連して,以下を再録.

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kami bangsa Indonesia(我々インドネシア民族)

kami とは「話し相手を含めない我々」,日本語の「私ども,手前ども」の概念なのだが,この本来の kami 以外の kami の知識も持っていてよい。

その一つが「帰属集団を強調した我々」とも言うべき kami である。

昔見た映画の一シーン,娘と父親のいささか緊迫した対話の場面。

娘が kami と言います。自分と恋人(その場にいない)を指してその場の話し相手の父親を含めない,つまり kami の正しい用法なのですが,それを聞いて父親が激怒します。kami とは,家族を指して言う言葉だ,というのが激怒の理由です。

この親父さんの頭にある kami が,それである。

1928年の Sumpah Pemuda(青年の誓い)の Kami putra dan putri Indonesia mengaku ...,1945年の独立宣言の Kami bangsa Indonesia dengan ini menyatakan kemerdekaan Indonesia.―― この二つの歴史的文書に出ている kami もまたこの「帰属集団を強調した我々」であると理解していいだろう。

「我々= bangsa Indonesia は,全世界の人々= non-bangsa Indonesia に向かって,我が民族の独立を宣言する」。独立宣言はこうでなくては,拍手も何もできるものではない。

おまけ: 「話し相手」を含む・排除するという区別がジャワ語文法には存在しないとか。この「帰属集団を強調する(= 集団に属さないものを排除する)我々」成立の背景にはそんな事情も働いているのだろう。[Sg 1.21.02]

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オバマ氏の Yes, we can. は勿論 Ya, kita bisa. である.
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by sanggarnote | 2008-11-12 09:13 | 文法


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